安倍七騎-あらすじ-

安倍七騎にまつわるお話


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題字 西尾智美さん

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あらすじ

ときは永禄13年(1570 )―。
駿河国を支配していた今川氏が没落し、甲斐の武田信玄がその勢力を駿河にのばしはじめていた頃のはなしである。
安倍川上流部にある武田方の城筒野城が、徳川家康の家来永井善左衛門と、かつて井川郷を支配していた今川家旧臣安倍大蔵によって襲われ、城主高瀧将監が討取られるといった事件が起こった。
“事件”である。が、駿河の領民にとって、これは“望ましき事件”であった。

そのことについて触れる。
今川の統治に、駿河国の領民に不満はなかった。器量でいえば、父今川義元には劣るものの、国主氏真の統治も悪いものではなかった。駿府に今川が居を構えて2世紀余、その基盤が確立して130年余も経っている。今川のおかげ国制も十分に整い、雅やかな文化も根付いていたのだ。領民は、むしろ駿府を焼き払った武田に不安を覚えていた。
であるから、筒野城落城は、「再び今川の治世を」という民意にかなうものであったのだ。


「ほれ、みたことか…。山西(現焼津市・藤枝市あたり)の徳一色城には、今川のご家来衆が武田に楯ついているずら。そのうち関東から、氏真様の義父君の北条様が駿河に攻めて来るにちげえねえよ。甲斐の山猿どもめ、挟み撃ちにあう前に、さっさと甲斐の山ンなかへ逃げ帰りな……」
 この領民の声に、
「何だと?!」
 と、異を唱える男がいた。
「喰ったり喰われたり、それが戦国乱世よ。 おい百姓ッ!! おっといけねぇ……、百姓は、おいらも同じか……。 けどなぁ百姓― と、あえて言わせてもらうぜ。 けどなぁ百姓、おいらとつれの六人は、このまま百姓で終わらねぇのさ」
 ニヤリとわらうその男は、腰の刀を鞘ばしらせると、それを天に突き上げつづけた。
「いいか、土くれの詰まったその頭で、よーっく考えてみろ。どこの国の殿様が、京の都に一番乗りするのかを―、だ」
「おいおめぇさん、いったいそれは、どういうことだい?」
「そいつはだなぁ……」
と、小兵衛というその男は、懐から、『安倍七騎』という一冊の本を取り出すと、
「これにちゃーんと書いてあらぁ」
と言ってそれを手渡し、おもむろに、領民に背を向けるのであった。

「なんだいあの野郎、“あらすじ”も何もあったもんじゃねぇ……」